札幌市圏における鉄道相互乗入れに関する検討(その2)

2.札幌市営地下鉄の概略

札幌市営地下鉄は,図2に示すように,南北線(14.3km,1971年開業),東西線(20.1km,1976年開業),東豊線(13.6km,1988年開業)の3路線があり,総延長48.0kmの地下鉄です。札幌市営地下鉄とJRとの相互乗り入れはなく,札幌市営地下鉄・南北線・東豊線のさっぽろ駅とJRの札幌駅,札幌市営地下鉄・東西線・新さっぽろ駅とJRの新札幌駅の2箇所が接続しているのみで,2箇所とも乗り継ぎは必ずしも短時間で行える距離にはありません。

図2 札幌市営地下鉄

札幌市営地下鉄の方式は,軌道中央に案内軌条を設置し,軌条を中心に走行路を左右に配置した中央案内軌条式鉄道(図3)で,図4に示すように,走行輪はゴムタイヤで,案内軌条を両側からゴムタイヤにて挟み走行するゴムタイヤ式車両の地下鉄です。

集電方法は,南北線は第三軌条方式,東西線・東豊線は架空電車線方式,案内軌条の形状は,南北線はT字型,東西線・東豊線はI字型,走行路面の材質は,南北線は樹脂製,東西線・東豊線は鉄板です。また,車両に関して,ゴムタイヤは,南北線はダブルタイヤ,東西線・東豊線はシングルタイヤで,軌間については明確な定義をすることは難しいですが,案内軌条式タイヤ中心間距離を軌間と定義した場合,3000系は2180mm,5000系は2230mm,6000系,7000系,8000系は2150mmとなります。なお,車体幅は車両の形式に係わらず3080mmです。表1に東西線・8000系の諸元を示す。

ゴムタイヤ式地下鉄はパリ地下鉄等でも見られるが、札幌市営地下鉄は独特の形式であり、「札幌方式」と呼ばれることがある。ゴムタイヤ式車両には,以下に示す利点と欠点がある。
〇利点
・粘着性が高いため加速・減速性能がよい。
・制動距離が短くてすむため、駅間距離が短い場合に有利で、運行密度を高められる。
・登坂能力に優れているため、起伏の激しい地形でも走行できる。
・走行輪にゴムタイヤを用いているため騒音が少ない。
〇欠点
・システムの維持費がかさむ。
・明かり区間では、天候の影響を受けやすい。(雪や凍結による影響)
・ゴムタイヤは転がり抵抗が大きいため、鉄輪よりエネルギー効率が低い。ただし、転がり抵抗が大きいことは、「登坂能力に優れている」という利点に繋がる。
・標準規格が存在しないため、他鉄道事業者からの中古車両の譲渡が困難である。
・普通鉄道との乗り入れが困難である。

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